この時期意外と多い!?一過性の鬱、冬季うつ病とは?

冬は美味しいものがたくさんある良い時期ですよね。
でも寒いので外に出るのが億劫になったり、朝なかなか起きることができなかったり、逆に暖かい部屋にいると眠くなるなんていう時期でもあります。
みなさんは、
冬は甘いもの食べたくてしょうがない~
冬って体重増えるよね~
冬になると1日中眠くなるよ~
と思うことありませんか?
これって実はうつ病の可能性があるんです。
ここ数年、テレビや雑誌などでも取り上げられている「冬季うつ病」ってご存知ですか?
うつ病はなんとなく理解できるけど…という方も多いと思います。
うつ病にもいろいろな種類があるんです。
今回は、冬の時期だけ心身の不調がおこる「冬季うつ病」についての症状や予防法などについてお伝えします。
冬季うつ病って?
一般的に「うつ病」と聞くと
・気分が落ち込む
・何事にも興味や関心がない
・食欲がない、体重が減ってきた
・眠れないなどの症状が季節に関係なくある状態
と、思い浮かぶのではないでしょうか。これは基本的なうつ病の症状です。
実はうつ病にもさまざまなタイプが存在します。冬季うつ病は、そのひとつで、名前のとおり冬の時期のみうつ病が発症することです。
特定の時期にのみ発症するので、「季節性感情障害(SAD)」や「季節性うつ」などとも言われたりします。
〇発症時期
秋~冬にかけて、日照時間が短くなり寒くなってくる時期に発症します。そして春にかけて日照時間が長くなり暖かくなると自然と改善してきます。
この時期に、特別な出来事やストレスがあるわけではありません。
〇冬季うつ病の特徴
・20~30代の女性に多い
・秋から冬にかけて毎年症状が現れる
・冬以外の季節では症状がまったく現れない
・過眠・過食の症状が見られる
冬季うつ病の症状とは?
症状は、基本的なうつ病と症状は同じですが、冬季うつ病特有の症状も見られます。
〇基本的なうつ病の症状
・何もやる気がしない、やりたくない
・疲れやすい
・何事にも興味や関心がないなど
〇冬季うつ病特有の症状
基本的なうつ病とは反対の症状が見られます。
・食欲増加、体重増加
・甘いものや炭水化物を欲する(特に午後~夜にかけて欲しくなる)
・過眠、朝起きることができない
・日中の眠気が強い
・夕方からうつ状態が重くなる、など
<うつ病チェック(DSM5)>
〇基本症状
1.抑うつ気分
2.興味・喜びの著しい減退
3.著しい体重減少・増加(1ヶ月で5%以上)、あるいはほとんど毎日の食欲の減退・増加
4.ほとんど毎日の不眠または睡眠過剰
5.ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止
6.ほとんど毎日の疲労感または気力の減退
7.ほとんど毎日の無価値観、罪責感
8.思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日認められる
9.死についての反復思考
・上記のチェック項目の5つ以上が2週間以上続くこと
・1か2のどちらかは必ず認めること
・苦痛を感じている事、生活に支障を来していること
そして、
・過眠と過食
・特定の時期にのみ症状が現れる(冬季)
・毎年繰り返され2年以上続く
・症状が出る時期に、ストレスがかかるような出来事がない
などが見られれば、冬季うつ病の可能性があるかもしれません。
※このチェック結果は、あくまでも目安です。
病気には個人差がありますので体調が悪い場合や症状の改善が見られない場合、気になる場合などは早めに医療機関への受診してください
冬季うつ病の原因について
冬季うつ病の原因の一因として日照時間が少ないことがあげられます。
症状は、秋(10月頃)から現れ、春先(3月頃)に自然に改善していきます。
日照時間が短くなる10月から3月頃まで続くため日照不足が原因であると考えられています。また、北米、北欧などの日照時間が少ない高緯度地域の発症率が高いことも報告されていることも理由です。
では、なぜ日照時間が短いとうつ病を引き起こすのでしょうか?
<日照不足とうつ病の関係>
梅雨時期やどんよりと曇っている日などは、なんとなく気分が良くなく、スッキリとしないことが多いと感じませんか?こんな日はやる気も起きずダラダラと過ごしているのではないでしょうか。
一方、晴天の日は、心も体も軽く、朝から活動的に行動できる、またはしようと思いますよね。
太陽光は私たちの気分を左右するだけでなく、健康を維持するためにも必要なものです。太陽光に当たる時間が減少すると私たちの体の中ではさまざまな機能が低下していきます。
人は目から光を取り入れることで感情や気分コントロールなどの働きをする「セロトニン」の分泌を促します。冬季うつ病が現れる冬は夏に比べて日照時間が40~50時間くらい少なく、必然的に太陽光を取り入れることが難しくなる時期です。
そのため、脳内にある神経伝達物質の「セロトニン」や睡眠ホルモンの「メラトニン」の生成が十分にできないことがうつ病を引き起こすと言われています。
<セロトニンとは?>
セロトニンは、心身の安定ややすらぎをもたらしてくれる「幸せホルモン」とよばれています。
基本的には、バランスのとれた食事、規則正しい生活を送っていればセロトニンが不足することはないと言われていますが、現代社会では難しくなってきています。
セロトニンの役割は、脳内でさまざまな神経へ情報を伝達しています。しっかりと情報を伝達することができないと脳内の物事を考える、記憶する、行動する、不安や恐怖を抑えるなどの機能が低下し、うつ病症状があらわれてきます。
また、セロトニンは日中に生成され、夜にはメラトニンという睡眠に関わるホルモンに変わるため、睡眠障害にも影響してきます。
<メラトニンとは?>
メラトニンは、季節のリズム、睡眠覚醒リズム、ホルモンの分泌といった概日リズム(サーカディアンリズム)を調整する働きがあります。
睡眠を導いたり体内リズムつくるので「睡眠ホルモン」とよばれています。
メラトニンが不足すると
・夜間―睡眠中に脳内分泌量が最大になる(眠くなる)
・昼間―太陽光で脳内分泌量が抑制される(起きる)
というリズムの調整ができなくなり、朝起きることができない、眠れない、眠くてしょうがないなどの睡眠障害がでてきます。
冬季うつ病の治療法
基本的なうつ病は、薬物療法・心理療法・安静といった治療を行いますが、冬季うつ病の治療法は、光照射療法(人工的に光を浴びる方法)を中心として行われます。
光照射療法とは、2500~3000ルクス程度の照度の光を、毎朝2時間ほど照射するという治療法です(一般的な学習スタンドでは1000ルクスあるかないかです)。冬季うつ病に悩む人の50~60%の人に効果があると報告されています。
治療は病院で行われることもありますが、毎朝継続して行うことが必要なために機器を購入して自宅で行う人もいます。また、抗うつ薬や抗不安薬といった薬を使った治療法もあります。
冬季うつ病を予防するには?
冬季うつ病の予防法はいくつかありますが、いちばんの予防法は太陽光を浴びる時間を多く作ることです。
通常は、規則正しい生活をすることで脳内のセロトニンが不足することはいのですが、現代人のライフスタイルでは難しくなってきています。
脳内でセロトニンを不足させないために日常生活で簡単に取り入れられる予防法をご紹介します。
<太陽光を浴びる>
冬季うつ病の一番の予防法は、太陽光を浴びることです。
冬は日照時間が少ないために朝から午後にかけていかに太陽光を浴びることができるかが重要です。日中に散歩でも買い物でも外に出る機会をつくることが一番ですが、仕事をしていたり、寒くて億劫になってしまったりと言う人もいると思います。
そんなときは
・朝起きてカーテンを開け太陽光を浴びる
・室内の照明を明るくする
・室内の日のあたる場所で過ごす(会社では昼休みなど日のあたる場所で過ごす)
・電車やバスなどの利用から(1~2駅くらい)徒歩に変える
という方法を継続して行うことで予防になります。
ただし、室内の照明を明るくした場合、就寝前に強い光を浴びてしまうと眠れなくなるので注意してくださいね。
<食事に気をつける>
セロトニンは必須アミノ酸であるトリプトファンを原料にして生成されます。
トリプトファンは体内で作ることができないために、トリプトファンの食事を取り入れることで予防につながります。ただし、摂り過ぎは体に良くないので適度に取り入れることが大切です。偏った食事ではなく、バランスの良い食事を心がけましょう。
〇トリプトファンが含まれる食材
・豆腐や納豆などの大豆製品
・牛乳やチーズなどの乳製品
・ピーナッツやアーモンドなどのナッツ類
その他、卵黄、バナナなどにも多く含まれていますので毎日とると良いでしょう。
また、トリプトファンはセロトニンを生成する際にエネルギーが必要になるため炭水化物の摂取も大切です。さらには、生成を促進するビタミンB6(マグロ・かつお・レバーなどに多く含まれています)の食品も積極的に取り入れましょう。
<適度な運動>
適度な運動は脳を活性化させセロトニンの生成を促します。
有酸素運動の中でもひとりででき、単調な運動が効果的です。
・ウーキング、ジョギング
・サイクリング
・水泳、など
適度な運動は、体重管理や健康維持の効果も期待できますし、何より気分転換にもなりますので習慣化できると良いですね。
まとめ
うつ病にもいろいろなタイプがあり、冬限定のうつ病があることを知ってもらえましたか?
冬季うつ病は、基本的なうつ病の症状とは異なるために、本人も周囲の人達もうつ病とはわからない場合があります。
冬の時期だけ心身の不調がある
1日中眠くて仕方がない
甘いものや炭水化物が無性に食べたい
などの気になる症状がある場合は医療機関に相談してみてくださいね。