とても気になる「認知症」。主な認知症の症状を実例を交えて解説!

以前からもよく話題になっている「認知症」ですが、最近は「高齢者ドライバー」などでも、話題に上がることが多くなっていますね。
「認知症」と一言で言っても、多くの種類があって、その対応方法も少しずつ違いがあることをご存知でしたか?
今回は認知症ケア専門士として、主な認知症の4つと症状を主に説明していきますね。
思い当たるかたは是非、「認知症専門医」のいる病院へ、受診してみて下さい。
【認知症と物忘れの違い】
加齢に伴う物忘れ
認知症ではなく、加齢に伴う物忘れは「うっかり忘れていた」ということです。
例えば「昨日の夕食のおかずはなんだっけ?」「お財布、どこに置いたかな。」
などです。
加齢に伴う物忘れは、「食べたことは覚えている。」「置いたことは覚えている。」と、したこと、置いたこと自体は覚えています。
自分が「うっかり忘れている」こと自体を自覚している状態です。
認知症の症状としての物忘れ
認知症の症状としての物忘れは「食べた事」「置いたこと」など、そのこと自体を忘れてしまう状態です。
「食べた事」「置いた事」などの記憶が喪失しています。
そのことから認知症患者は、テレビでよく見かけるように「ご飯を食べていない。この家では私はご飯も食べさせてくれない。」と言ったり、「財布がない。泥棒が入った。それか家族の誰かが持って行った。」と怒り出したりすることもあります。
認知症の症状と、加齢による物忘れの違い。同じ「忘れた」という事でも、大きな違いですね。
今は加齢による物忘れであっても、いつ認知症の症状による物忘れに変化するかわからないので、気になることがあれば認知症になる前に、「物忘れ外来」を気軽に相談してみるのも良いと思います。
【主な認知症の種類と症状】
認知症の詳細に関しては、細かく説明をしていくと専門的になっていきます。
ここではわかりやすく、主な4つの認知症の種類、症状について書いていきますね。
アルツハイマー型認知症
認知症の割合として最も多いのが「アルツハイマー型認知症」です。男性よりも女性の方が発症率が高いです。
脳にアミロイドベータやタウというたんぱく質がたまり、神経細胞が破壊され、脳萎縮が起こる事が原因だと言われています。また徐々に脳も委縮していき、身体機能も失われていきます。
アルツハイマー型認知症では最近の記憶を忘れてしまう症状があります。これは記憶を司る海馬に病変が起こり、最近の出来事が記憶できなくなるものです。アルツハイマー型認知症に対する治療薬は、早期から投与することで症状の進行を緩やかにして、効果があると言われています。早期に受診し診断されることで、早期の投薬治療が可能になります。薬の種類も何種類かあり、患者に合うものを見つけることが出来ます。アルツハイマー型認知症の予防には、生活習慣病の予防や生活習慣の改善が重要です。また、ポリフェノールが良い、麻雀が良い、何々が良いなどと、最近では色々な情報も多くなっています。食品や趣味、運動と上手に取り入れたいですね。
「症状」
初期
記憶に障害が起こります。体験したこと自体を忘れてしまう症状です。また、忘れている自分を取り繕うような言動も見られます。
中期
最近の記憶が失われ、現在と過去の区別がつかなくなっていきます。
有名な周辺症状として「徘徊」があります。例えば、夕方になると「家に帰って子供の夕食を作らないと大変。」や、出勤しようとする高齢者です。施設では、出勤を止める職員を怒りだしたり、説教をすることになります。自宅では出勤したまま、どうししたらいいのか、なぜ外出したのかなどの目的を忘れて混乱してしまい警察に保護されることもあります。
後期
脳萎縮が進行し、言葉の数が減少し、意味もわからなくなり次第に話が通じなくなります。食事も集中できなかったり、食事をするという行為自体も忘れてしまうために食事の介助も必要になります。また危機管理も出来ない状態になるので、転倒や滑落、転落の危険性も高くなります。やがて寝たきりの状態になり、上下肢の関節拘縮、嚥下状態も悪くなります。嚥下障害により栄養不良、栄養不良から褥瘡の形成、誤嚥性肺炎などの危険性も高くなります。
主に中核症状では記憶障害、見当識障害、判断力の低下が見られます。周辺症状では、本人の性格などで変わってきますが物盗られ妄想、徘徊、介護拒否などが出現することがあります。
脳血管性認知症
アルツハイマー型認知症の次に多いのが脳血管性認知症です。脳血管性認知症は脳梗塞や脳出血などの、脳の血管障害によって起こる認知症です。
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳の血管の病気により、脳の血管が詰まったり出血することで、脳細胞に酸素が送られなくなり、神経細胞が死んでしまい認知症が起こります。
原因となる脳血管障害は、主に生活習慣病が原因となる事が多いです。原因となる高血圧、高脂血症、糖尿病の予防が脳血管性認知症の予防につながります。また、脳血管性認知症の原因となる脳血管障害を早期に治療することが大切です。
脳血管性認知症は男性の方が女性よりも多く発症している認知症です。アルツハイマー型認知症は徐々に進行するのに対して。脳血管性認知症は良くなったり悪くなったりの一進一退を繰り返します。多発性脳梗塞などで、小さな梗塞が何度も起きている場合は脳梗塞が起こるたびに悪化していきます。脳の障害を起こした場所により、症状が違います。また脳血流が少なくなることが原因のため、日によって症状も違います。
「症状」
- 「まだら認知症」になりやすいです。(ダメージを受けた場所により、出来たり出来なかったりすることがあります。)
- 「感情失禁」が多くなりやすいです。(感情失禁とは、感情コントロールが出来なくなり、すぐに泣いたり怒ったりすることです。)
- その他、障害を受けた場所により症状に違いがあります。
例えば、
麻痺が無くても、お箸や歯ブラシの使い方がわからない。→失認
上着を足に履いてしまう、袖に首を通す。→失行
物の名前はわかっていても、言葉がなかなか出ない。→失語
などです。
脳血管性認知症は、脳梗塞などの再発も多く、急に症状の悪化も見られるので注意が必要です。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、レビー小体というたんぱく質が脳にたまる事で起こる、脳の萎縮が原因だと言われています。このたんぱく質はパーキンソン病の原因にもなるもので、認知症を伴うパーキンソン病と言われる症状は、このレビー小体型認知症だということも判明してきました。
「症状」
パーキンソン病に似た症状(手が震える、動作の緩慢、筋肉のこわばり、身体のバランスが取りにくい)で、体の動きが緩慢になり、前傾姿勢、歩行障害や体の固さも伴い転倒しやすくなります。最初の1歩が出にくく、歩き始めると勢いで止まらなくなることもあります。
幻視は、リアルに人、物、動物、虫などが昼夜問わずに出現したり、幻視に加えて幻聴も発生します。
認知機能障害も変動しやすく、症状が良い時は話が通じますが、悪い時は何もわからなくなります。気分や態度、行動の変化が顕著で日内変動もあります。レビー小体型では、初期の段階では物忘れよりも本格的な幻視が見られることが多いです。
幻視は「ほら、そこに虫がいるから捕まえないと。」「人がいるから、お茶を出さないと。」など、リアルなものが多く、その場所に向かって話しかけたり、お茶を出したりすることもあります。
また、誤認妄想もあります。誤認妄想とは、自分がまだ小さい子供だと思う事や、働いていると思う事、自宅にいても自宅ではないと思う事です。家族が知らない人と入れ替わっていると思うこともあります。(替え玉妄想と言います。)
知られていない家族の方も多いのですがレビー小体型認知症は薬の激しい副作用が出やすいということもあります。
認知症専門医であれば安心だと思うのですが、このレビー小体型認知症特有の薬の副作用に関して、知らない医師も多いです。
知らないまま処方されて、寝たきりにしてしまったり、悪化させてしまう医師もいます。私のケアマネ時代の担当利用者にも、その疑いがあるかたがいました。
レビー小体型認知症の話をご家族に話して、セカンドオピニオンで認知症専門医のいる病院へ受診を勧めました。そこで、レビー小体型認知症と診断され、薬も変更したことで症状が改善された例もあります。
この薬の点は、レビー小体型認知症に関しては特に注意した方が良いと思います。
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症は、若い人でも発症する認知症です。
前頭葉と側頭葉の萎縮により認知症が起こります。
前頭側頭型認知症は、前頭側頭葉変性症の一つで、ピック病、運動ニューロン疾患型、前頭葉変性症が前頭側頭型認知症に含まれます。
前頭葉は物を考える中枢的な役割の場所です。感情をコントロールし、理性的な行動をしたり、計画を立てたり、状況を把握する機能があります。
側頭葉は言葉を理解したり、記憶する場所で聴覚、嗅覚も司っています。
このことから前頭側頭葉型認知症は物忘れはひどくないです。
常識的な行動から逸脱している場合が多いために、精神疾患と誤診されることもあります。
「症状」
同じ言葉を何度も繰り返すことが多くなります。「もうやりました。」「どこいくの。」など、なんの脈絡もない言葉を何度も繰り返します。
割と強い口調で「もうやりました。」などと繰り返されるので、経験が浅い介護職員は少し圧倒され、戸惑うこともあるほどです。
また、同じ行動も繰り返すこともあります。机を手でたたいたり、さすったりなど、ただずっと同じ行動をしています。
同じ場所にずっと座っていたり、聞いていることが難しく、急に立ち上がってどこかへ行ってしまったりします。何かを質問しても「知らん。」と即答することも多くなります。言葉のオウム返しも見られます。
社会のルールを無視した行動をとることも多くなります。
例えば、お店の物を悪気なく万引きしたり、外出先で服を脱いでしまったり、痴漢行為をしたりなどです。
警察に保護されても、本人は罪悪感はないです。これも認知症の症状なのです。
また、注意されると怒り出したり暴力となることもあります。
「昔は穏やかで大人しくて優しいお母さんだったのに…」と、戸惑われるご家族が多いのが前頭側頭型認知症の家族です。
これも認知症による脳の萎縮による病状なのです。
【まとめ】
認知症の主な4つの症状を、実例を交えながら書いてきました。
大好きな親が人が変わってしまったようになって…や、自分はどうなるのかな…と認知症に関しては、不安に思うことも多いですね。
でも「ボケてしまった方が気が楽。ボケた者勝ち!」と、言われる人も多いのですが、認知症になった当事者にとって、認知症初期などは「自分はどうなってしまうのだろう…」「自分が自分じゃなくなっていく…」と不安に押しつぶされそうな毎日だと聞きます。
認知症になったかたの気持ちも、想像してみると一概には言えないですよね。
認知症の研究も進んでいて、早期の発見と早期の治療や服薬で進行が緩和されます。
「親の様子が少しいつもと違う」「私、この頃少し忘れっぽい。記憶が抜け落ちている時があるかもしれない。なんだか不安。」
そんな時は、認知症専門医のいる病院で相談してみて下さい。
認知症は早期発見と早期治療、正しい服薬で、進行が変わってきます。
また、正しい対応の仕方を知っているか、知らないかで本人の周辺症状が改善したり、介護者の精神的な負担軽減にもつながります。
一人で抱え込まずに、どんどん相談していきましょう。