【初心者でも簡単】はじめてのバラの挿し木

バラの挿し木は、手順を守って行えば問題なく誰でも簡単にできるのですが、ベテランであっても失敗なしですべて根付かせられるわけではないため「難しい」とされています。
そのため、「難しい」だけが独り歩きして、非常に難しい作業と思い込みがちですが、作業そのものは難しくありません。
では何が難しいのかというと、10本やって10本とも失敗することもまれではなく、根付いても栽培途中で枯れてしまうことも多いので難しいといわれます。
丈夫でぐんぐん育つ「強健種」であれば失敗するリスクはかなり減少しますが、その場合は10本挿し木したら10本に増える上に所狭しと育ち、苗でも簡単に買えるのに持て余してしまうため、挿し木するメリットは多くはありません。
苗で手に入りにくいバラの枝が手に入った時こそ挿し木に挑戦するタイミングです。
10本のうち1本でもつくとうれしい!という気持ちで挑戦するのがバラの挿し木の醍醐味なのだと思います。
挿し木におすすめのバラは珍しい切り花
切り花を購入してきた場合、生産者が栽培したバラを切り取ってからどのくらいの日数がかかっているのか今一つはっきりしませんが、庭に植えられたバラを切り取ったばかりのものと比べると弱ってきています。
着根率はフレッシュな方が高くなるので、挿し木に挑戦するのであれば入手後直ちに作業を開始しましょう。
挿し木の着根率は高くないので、挿し穂にできる5枚葉や7枚葉が複数ついた枝を多めに用意しておきましょう。
苗から育てた方がはるかによく育ち、管理もしやすいので、育てていくにも手間がかかる挿し木は「苗が手に入りにくい珍しい品種」を選ぶのが一番です。
バラの挿し木におすすめの土
挿し木に使うのにおすすめの土は、肥料分が含まれていない無菌状態の土。
ピートモスや挿し木・種まき用土、鹿沼土、バーミキュライトなどがおすすめです。
バラは酸性寄りの土壌を好むので、もともと酸性寄りのピートモスや鹿沼土も酸度調整に気を取られなくても挿し木に使えます。
挿し木したバラが根づいたとき、もともと挿し木の苗床に使った土をベースに使うとその後に枯れてしまうリスクも減らせるので、手に入りやすく扱いやすい土を利用するようにしましょう。
挿し木するのにおすすめの時期
バラの生育期の春から秋にかけて、夏場を除いて挿し木する場合と、バラの休眠期である冬に行う場合とがありますが、根が短期間で成長してくれて初心者でも失敗しないのは生育期の挿し木なので、できれば春から秋にかけて、夏場を除いて行うようにしましょう。
暑すぎる時期は水も挿し穂も腐ったり弱ったりしやすいので、比較的涼しくて過ごしやすい時期を選ぶようにしてください。
【簡単!】バラの挿し木
では実際に、バラの挿し木をどうやってやるのか、簡単に説明しましょう。
手順をもとに作業を行うだけなので、作業としては簡単です。
1.切り花の先端を湯切りしておく
しっかりと水揚げしないと挿し木が成功しないので、熱いお湯に枝先を1~2分つけ、水に移してから水中で先端を5mmほどカットする「湯切り」をしておくと水揚げに失敗しません。
2.鉢に用土を入れて水をかけて含ませておく
挿し木してから水をあげるのではなく、あらかじめ水を含ませた用土に挿し木したほうが着根率が上がるので、必ず先に土に水を含ませておきます。
ピートモスや種まき・挿し木用土は上から水を掛けると水を含まずに流れてしまうものもあるので、ゆっくりと水を含ませるようにします。
3.バラの枝を15㎝ほど切り取る
花に近い三枚葉のところからは新しい葉が出てこないので、5枚葉ないし7枚葉が複数含んだ部分を15㎝ほどの長さで切り取ります。
ハサミを入れるとき、できれば水の中で切る水切りを心がけると、水揚げに失敗しにくくなります。
4.よく切れるナイフで切口を斜めに切り落とす
切口の表面積が大きい方が根が出てきやすいので、挿す部分の切り口をナイフで斜めにスパッと切り落としましょう。
作業しずらいのですが、できればこれも水中で行ったほうが水揚げに失敗しにくくなります。
5.切口に発根剤をつける(あるなら)
発根剤を使うと発根する率がとても高くなるので、お手持ちの物があれば切り口につけておきましょう。
メネデールであれば、少量取り出したものに切口を軽く浸しただけでも十分です。
6.挿し位置に穴をあけて挿し穂を差し入れる
挿し穂を挿したい位置に割りばしなどを挿して穴をあけてから、その穴に挿し穂が傷まないようにそっと差し入れます。
入れた後、挿し穂がぐらつかないように土をポンポンして軽く固めて固定させましょう。
7.葉の付け根の2枚ずつを残してカットする
葉をそのままにしていると、葉から水分が蒸発しやすいので7枚葉ないし5枚葉の一番付け根の2枚を残して葉を切り落としておきましょう。
葉の付け根に赤くぷくんとした部分があることもありますが、これが新しい葉っぱとして成長していきます。
もっと早い段階で切っておいてもいいのですが、どっちが上かわかりにくくなることもあるので、挿してからの方が安心です。
8.底から水が流れ出るまで水やりする
やさしい水流で、鉢底から水が流れ出るまで水やりをしておきます。
強い水流で水やりをすると土がはねて葉裏につき、そこから病気になってしまうこともあるので、優しい水流で水やりをするようにします。
9.水切れしないように管理する
直射日光が当たるところではたちまち挿し穂が枯れてしまうので、風通しの良い明るい日陰に置いて水切れがしないように管理します。
水やりをするときは、「工程8」と同じく、優しい水流で鉢底から水が流れ出るまで水を注ぎます。
底に水を貯めて置き、水切れさせないようにする「底面給水」をすると水切れが起こりにくいのですが、腐ったりしやすい反面もあるので、賛否両論です。
水切れしていないかこまめにチェックできる方にはおすすめではありませんが、忘れやすい方は底面給水にしておいた方が無難です。
動画で確認「バラの挿し木のやり方」
言葉で説明してもわかりにくい部分は、動画で確認するのが一番ですね。
動画からは、作業そのものは難しくないことがよくわかります。
一切水切りはされていませんが、水切りしなくてももちろん挿し木はできます。
挿し木した鉢はどこに置いておくの?
挿し木したばかりの挿し穂はとてもデリケートなので、直射日光が当たらない、風通しの良い明るい日陰に置いておきましょう。
バラは室内よりも屋外の方が生き生きと育ちます。なるべく屋外に置いておきましょう。
根付いたのはどこでわかるの?
挿し穂がダメになると、真っ黒に枯れ果てるので、そうなってしまわないうちは挿し穂は生きています。
地下部が成長していくと、地上部も成長していくので、新しい目が伸びてきて、葉が何枚か育って来たら挿し木が成功して根付いたことがわかります。
おおよそ1か月半~2か月くらいは気長に成長を待ちましょう。
手に入ったバラの鮮度がイマイチのとき
手に入ったバラの鮮度がイマイチだけれど挿し木に挑戦してみたい時は、枝を湯切りした後メネデールを規定量溶かした水に3時間~半日ほど挿しておいてから挿し穂にするのがおすすめです。
元気のいい葉がしっかりついている部分を挿し穂にしましょう。
失敗する率は鮮度の良い物よりも高くなるので、いい状態の部分を複数挿し穂にします。
また、挿し穂を水栽培して根が出てから、根を傷めてしまうことのないよう注意しながら苗床に移し替えて育てる方法もあります。
茎が水没している部分が傷みやすいので、枝先1㎝位を水に浸けて育て、水が腐らないよう水切れしないよう管理していきます。
この水も少量のメネデールを溶かしておくと発根しやすくなります。
根付いた苗を育てていくには
根付いた挿し木苗は、まだまだベビーの状態なので、ちょっとした環境の変化であっという間に枯れてしまうこともあるので、水切れがしないように気を付けながら育てていきます。
なるべく土を落とさないで根を傷めないようにそっと掘り起こして植え替えますが、植え替える植木鉢は大きい鉢にしません。
根の水分調整が上手ではないので、小さいポットから、徐々に大きな鉢に植え替えていきます。
どういう土が栽培に適しているかというと、苗床で使った土と同じものをベースにしたものが最適で、一般の培養土やバラ用の培養土とブレンドして使います。
肥料分が多いと吸収しきれないので、苗床で使った土と同じ土を多めにブレンドします。
「同じ土」というと誤解されそうですが、苗床から土を取り出して使うのではなく、細菌が混入しにくい殺菌された新しい土同士を使います。
土の種類が同じというだけで、根の周りについた土以外はそのまま使いまわししません。
肥料はなるべく控えめに、つぼみが付いたらなるべく早くに摘み取るようにして、株を成長させるようにします。
いつまで摘み取るのかは、最初の1年という人も、最初の2年という方もあり、育ち具合で違うと思いますが、挿し木苗は丈夫なノイバラなどを台木に使ってある接ぎ木苗よりも根の力が弱いものが多いので、気長に成長を待つようにしましょう。
まとめ
バラの挿し木は、やり方そのものは難しいものではありませんが、鉢に植え替えて育てていてもちょっとしたことで枯れることもあるデリケートなものなので、手を掛けながらゆっくりと育てていく作業になります。
園芸を行っていく上で、1年2年は決して長いスパンではありません。
簡単に育てるのであれば苗を買ってきて育てるほうがはるかに迅速で手間がかかりません。
入手困難な苗をじっくり育てるのがバラの挿し木の楽しみになります。